薬の種類
今、日本にある薬の剤形は28種類あります。大きく分けて固形製剤、半固形製剤、液状製剤、その他の製剤、無菌製剤に分かれておりま す。その中でも一番良く触れることのある固形製剤はカプセル剤、顆粒剤、丸剤、散剤、錠剤、トローチ剤に分かれております。更にその中の錠剤について今回 は詳しく書いていきたいと思います。
錠剤の特徴
一定量を正確に服用ができる。取り扱いやすさや飲み込みやすさを顧慮して、おおむね重量200-500mg、直径8-15mmほどのもが多い。円盤形やレンズ形、竿形などさまざまなものがある。携帯しやすく、識別しやすい
大量生産に向いておりコストも安い、更に錠剤のコーティングや剤形の工夫により腸溶性や徐放性などの製剤的特長を付加しやすいという利点がある。
一方、製剤的特性を付加したことで、指示通りに服用しないと効果を発揮しない。投与量の細かい調製が難しい。
種類
使用方法による分類
内服用錠剤
・ 口腔内崩壊錠 - 口の中の唾液で素早く溶解し、唾液と共に飲むことが可能になる。飲む必要がある。
・ バッカル錠 - 飲み込まず口腔内で溶解させて使うもの。ほほの内側の口腔粘膜から有効成分を吸収させる。
・ 舌下錠 - 舌の下に挟んで粘膜から吸収させる
・ 外用錠剤 - うがいなどの際に溶かして使う溶解錠や膣錠がある。
コーティングによる分類
・ 素錠(裸錠) - 成形したままの錠剤。表面に何もしていないもの。
・ コーティング錠 - 薬剤の安定化、矯味、矯臭などの目的で裸錠の表面に均一に皮膜を施したもの。白糖による糖衣錠、フィルムコーティング錠がある。また、フィルムコーティン グの種類に胃内で溶ける胃溶錠、胃で溶けず主に小腸で溶解する腸溶錠、徐放性を持たせた徐放剤などがある。
特殊錠
・ チュアブル錠 - 服用時かみ砕いて使う錠剤。制酸剤など比較的用量の多い医薬品に使われる。
・ 口腔内崩壊錠(OD錠) - 唾液で崩壊する錠剤。水なしでも服用できる。
・ 持続性錠(徐放錠) - 溶解性の異なる基材などを使い、徐々に薬物が放出され長時間薬効が持続するように設計された錠剤。
o ワックスマトリックス錠 - 体内で徐々に崩壊する徐放化基材に有効成分を分散させた錠剤。
o コンチンシステム-薬物含有のゲル形成高分子素錠を高級脂肪アルコールで皮膜を被せた錠剤
o グラデュメット錠 - 多孔質の不溶性樹脂に有効成分をしみ込ませた錠剤。拡散して放出する。
o 多孔性皮膜錠 - 不溶性で微細な穴の空いた皮膜をほどこした錠剤。
o 多層錠 - 放出性の異なる複数の層からなる錠剤。速溶層と徐放層を単純に重ねたスパンタブ、速溶錠の核に徐放錠をいれたロンタブ、速溶錠の核に腸溶錠をいれたレペタブがある。
o スペイスタブ - 速溶錠の中に徐放性の顆粒を分散させたもの。
o レジネート - イオン交換樹脂に薬物を吸着させた錠剤。
添加剤
通例錠剤には、有効成分の他に以下のような添加剤が加えられる。
・ 賦形剤 - 有効成分が少ない場合に、取り扱うのに適当な量になるように加えるもの。生理活性を持たない物質として、おもに乳糖やデンプンなどが使われる。
・ 結合剤 - 原料の粉体粒子同士を結びつけるために加えるもので、錠剤の機械的強度に影響する。デンプン糊やアラビアゴム糊、ヒドロピシプロピルセルロースなどが使われる。
・ 崩壊剤 - 体内の水分を吸って膨張するなどして錠剤を崩壊させ有効成分の放出を容易にするために加えるもの。賦形剤として使われるデンプンは水分を吸って膨張するの で崩壊剤としての機能も持つ。その他には、セルロース類などがよく用いられる。また炭酸のように水と反応してガスを発生し崩壊させるものもある。これを 使った錠剤を発泡錠という。
・ 滑沢剤、流動化剤 - 粉体の流動性をよくし、充填性の改善、付着防止など目的として圧縮形成を容易にするために加えるもので、ステアリン酸マグネシウムなどのワックスやタルクなどが用いられる。
長所と短所
取扱いが容易で、一定量を容易に取ることができるという点で優れる。徐放錠などにすることにより、持続時間を調整したりすることもできる。散剤などと異なり外見で何の薬か識別できることも長所のひとつである。
一方、微妙な量の調整ができないこと、乳幼児や高齢者では飲みにくい場合があること、複数の医薬品を服用しようとすると量が多くなってしまうことなどが短所としてあげられる。
ま た経口剤は一般に、錠剤が崩壊するのに時間がかかること。 口腔粘膜から吸収される舌下錠などを除き、有効成分が消化管から吸収され肝臓を通らないと全身 血流に移動しないことから、やはり効果の発現までに時間がかかることと、消化液や肝臓での代謝により有効成分の効果が変化してしまうことが短所となること もある。
服薬時の注意
一般に錠剤を服用する際には十分な水で服用する必要がある。水の量は錠剤の崩壊や溶出に影響する。また水が少ないと、錠剤が咽頭などに張り付いてしまい、高濃度の医薬品にさらされた粘膜が潰瘍を起こしたりすることがある。
チュアブル錠などを除き、錠剤を砕いてしまうことは、臭いや味のマスキング効果、徐放性や腸溶性などが失われてしまうので避けなければならない。
また、高齢者など飲み込む力が弱っている人には喉に詰まらせたりするおそれがあるので、その際は水分を多めに摂る、ぬるま湯と一緒に飲む(溶解力を高めるものがある)、市販の補助ゼリーを使用するなどの工夫が必要である。